おもちゃと人形―だれしもが子供時代をあたたかくはぐくまれ、またおとなになってもなお心を遊ばせる対象としているこの両者は、その本来の重要性にもかかわらず、たかがおもちゃ、たかが人形として、社会的にはこれまでその研究がとかく軽視されてきました。
ひとつには、その存在があまりに身近く、だれにも親しいものでありすぎたからとも申せましょう。
しかし、時代が科学万能から人間の心を見直す方向へと確実に回帰しつつある昨今、こうした社会的偏見を是正しつつ、その意義を改めて正面から問い直し、かつ学問的にこれを深めて行くことは、きわめて大切であると確信します。
日本人形玩具学会は、この確信のもとに、平成元年(1989)2月、呱々の声をあげました。
そして、この目的を達成するためには、これまで各専門分野からの視点のみで仕事をしてきた研究家たちが、その境界を取り払い、お互いに手をたずさえて、ひとつの横断的な学会を形成することが必要となります。
そこで、発足にあたり、私たちは人形・玩具にかかわるそれぞれの立場を、およそ次の十項目に分類してみました。
1. あそぶ
2. あつめる
3. つくる
4. えんじる
5. こころみおこなう
6. しらべる
7. しらせる
8. あきなう
9. たもちならべる
10.おもいめぐらす
「人形・玩具学」の確立にむけて、前記の立場に立つ会員同士が情報や知識を交換し合い、その研究を深め合うとき、社会および文化の中における人形・玩具の価値は、おのずから明らかとなって行くことでしょう。
どうぞ学会の今後にご期待ください。また、本学会の意義を正しく理解される全国の心ある人々のご参加を、お願い申し上げます。